過去事業一覧

農商工連携等人材育成事業

研修修了生  活動リポート

「ふるさと起業塾」研修修了生  活動リポートは、ふるさと起業塾の農商工連携等人材育成事業の研修を経て、現在行っている活動内容のリポートです。

No. 活動日(報告日) リポートタイトル 作成者
1 2009/10/14 「田舎暮し体験」 ~ 漁業体験 ~ 小田  祐一郎さん
2 2009/11/11 みなみん里・竹田市農産物直売所訪問 徳澄  大輔さん
3 2009/12/03 早速、自宅でかぼすジャム作りに挑戦 若佐  重芳さん
4 2010/01/29 いすみでの活動報告 打矢  功一さん
5 2010/02/12 私の近況報告 三田  寛之さん
6 2010/02/22 起業塾その後〜 吉田  光代さん

2009/11/11~11/12   徳澄  大輔さん

みなみん里・竹田市農産物直売所訪問

私が居住する静岡県静岡市において地域活性化という分野で起業を検討するにあたって、核となる産業が農業であることを強く意識しております。今回日本アグリマネジメント株式会社 社長松本様のご厚意で、大分県にある農業生産法人みなみん里の圃場、並びに訪問道中の竹田市農産物直売所並びに加工所を訪問しました。各訪問先で見聞きしたことや印象、そして自らの起業にどのように活用して行くかをレポートさせて頂きます。

11月11日(水)

竹田市荻町農産物加工所「もぎたて」

農家が朝収穫したトマトをここに持ち込むことで、委託形式でトマトジュースに加工し瓶詰めまで行い、夕方には引き取れるようになっています。作業の全行程を50 代以上の地元女性グループ9 名(うち実作業は同時に4 名程度)程度が手作業で行います。この地域にはこのような雇用を提供する場所がなかったことや、週に2〜3日(ここでは通常月曜日、火曜日、水曜日の三日間)しか稼働する必要がないため喜々と作業しているのが印象的でした。実作業は、瓶洗浄1名、攪拌1名、瓶詰め1名、王冠封印1名。

食品栄養士の資格を持っている方もおり、ジュースの加工1 つとってもおいしさを引き出すための温度管理などは独自のノウハウがあるようで、良いトマトを持ってきた農家には誠意を込めて、色づきや形の悪いトマトにはおざなりの手順でしか作らないという、裏話も聞くことが出来ました。基本的にここは委託加工なので、販売に関しては持ち込んだ農家がそれぞれの責任において行います。

トマトジュース加工

この加工所は他にも餅などの加工品も作れるとのことでしたが、訪問当日はトマトジュースのみでした。立地場所は中山間地域で周囲は畑か山しかないところですが、町中よりもむしろ農家からのアクセスがこ ちらの方がよいようです。

トマトジュース1 瓶あたりに使用されるトマトは約3 個とのこと。あまり甘みのないトマトでも、煮込んでジュースにすると甘さが出てくるのが不思議です。添加物は一切無く、できたて熱々のトマトジュースは独 特の甘みと酸味がありましたが、少し時間をおいてさますと酸味が消えていました。単品として商品価値の低かったトマトも、ジュースに加工することで1 瓶480 円〜680 円に価格が上がるのは加工品の特徴でしょうが、委託生産費や直売所の手数料をさっ引いても、売れるかどうか分からないトマト単品よりも日持ちし保存が利くという点で、生鮮品よりも扱いやすく利益が多く取れるのが大きなメリットであることを目の当たりにしました。

11月12日(木)

みなみん里 トマト栽培ハウス@一ツ木(吊り下げ式)

最初にお邪魔したのが、一ツ木地区にある吊り下げ式で栽培しているトマトのハウスでした。品種は「感激(桃太郎)」で収穫期間は冬春。この季節のトマトは水やりが少なく糖度が6度以上と高めになるのが特徴とのこと。吊り下げ式での栽培方法で、1つの茎から最終的に4玉収穫できるように調整しています。どの玉にするかはピンポン球サイズにまで生育してから選択するとのこと。メインの茎から余分に出る「脇芽(わきめ)」は摘み取ってしまうそう。

ハウス栽培最大の敵は、虫でも病気でもなくカビとのこと。特にこの季節は結露によるカビの発生を抑えるため、夜間でも14度程度を維持してカビを防いでいます。ヒーター稼働に使用する燃料はA重油と呼ばれ、1シーズン10アール(1反)あたり7〜10kg≒約1万リットルで、1シーズンの負担としては50万円以上と決して安くないコストがトマト栽培には掛かっています。化石燃料を輸入に頼っている我が国では、トマトの栽培にさえも原油価格が影響していることに驚きを感じました。受粉は基本的に蜂を使用することで人間の作業量を減らしています。

生育スピードは、段と段の間で約2〜3週間掛かります。出来たら収穫・出荷ではなく、いつ出荷すれば高く売れるか(夏秋ものが途切れる頃に出荷するなど)と言うことを念頭に置いて、生育速度を管理しているとのこと。一度の栽培で収穫できる量は15トン〜18トン。JA出身の足立さん、野中さんは、JA時代多めの収穫を期待していたが、生産に回ったとたん収穫量を少なめに見積もる傾向にあったのが興味深い点でした。立場が変わると数字の組み立て方や見方が変わるのは、経営者の視点・投資家の視点という所にも共通していそうです。

JAMの臼杵市内におけるトマトシェアはおよそ5 割と大変多いです。(甘藷は9割以上でほぼ全量とのこと)。

トマト栽培には大きく2つの栽培方法があり、1つはここ一ツ木での吊り下げ方式、もう一つはななめ誘引方式。釣り下げは熊本で主流の栽培方法、臼杵ではななめ誘引が主流。各栽培方法におけるメリット・デメリットは以下の通り:

  特徴 メリット デメリット
吊り下げ式 幹が生育するに従い、収穫する段が作業しやすい高さになるよう、茎はとぐろを巻くように吊り下げて栽培 幹への負担が少なくストレスの少ないトマトが出来る(=甘くておいしい) 全ての玉に日光が均一に当たらないため色にばらつきが出やすい
ななめ誘引式 幹が生育するに従い、収穫する段が作業しやすい高さになるよう、茎を一定間隔で張ったワイヤーに誘引する栽培方法 全ての玉を日光が当たりやすいよう外向きに調整でき、色づきの良いトマトが出来る 気にストレスが掛かる
病気になりやすい

トマト

トマト

ちなみに、2つの栽培方法を同時に試しているのは、収穫量や作業効率の面でどちらが優れているかベンチマーキングしているためとのこと。具体的にどの指標をどのように取っているかまでは質問していないため不明でした。

8月のお盆明けに定植し、いずれの栽培方式も6 月まで15 段栽培するとのこと。7〜8月は、土壌の蒸し込み(殺菌)のため何も栽培していません。

素人による収穫作業の可否について質問したところ、少人数での作業なら脇芽取りや収穫など多岐にわたって作業が可能だが、団体などの大人数になるとせいぜい収穫体験程度で終わってしまうだろうとのこと。おそらく対象を小学生と仮定したためこのような回答でしたが、大人向けの収穫体験や農作業による癒し効果を狙った有償サービスとして、であれば事前の教育さえクリアすれば脇芽摘みなどの作業でも大人数でやって貰えるのではないかと思いました。逆に言うと、そのような作業をコストとして生産者が負担するのではなく、むしろ利益として作業者に負担して貰えるような仕組みさえ作れば、農作業にかかるコストを大幅に減らすことも可能ではないかと思います。例えば、複数企業との法人 契約によって、心に病を持つ人を受け入れて有償で作業して頂ければ、トマト以外の収入確保+無償労働力の確保が可能となります。専門のセラピストによる事前相談や、作業過程における癒しの進捗などの管理が必要ですが、これは社内にリソースを持つのではなく、社外の専門家との連携をすることで対応できると思います。これ以外にも、体験農作業として家族連れや親子、カップル向けにその時の作業ニーズに応じた作業メニューを用意することで、トマト以外の収入確保+無償労働力の確保が可能となりそうです。後者向けの場合は、お土産として個数を限定して自らが収穫したトマトのお持ち帰りをすることで、お得感を出すこともアイデアの1 つでしょうか。

観光農園形式については、不特定多数の人間を入れることでトマトに大敵な病原菌を、外部から持ち込んでしまう恐れがありますが、この点さえ解消出来れば良さそうです。

ちなみに、トマトの収穫だけではなく加工所とタイアップするなり加工所を自社で所有することにより、トマトジュースへの加工作業を体験することも、付加価値の創造になると思います。オレンジやグレープフルーツジュースと異なり、トマトジュースの加工は、煮詰めるという作業が発生しますがこれは案外一般には知られていません(今回ふるさと起業塾で竹田市に実地研修に行ったメンバーの殆どが知りませんでした)。簡単に言うと、ミキサー掛け、煮詰め、種と皮の選別、再度煮る、瓶詰めという行程を経てトマトジュースは完成します。

トマトジュース加工

竹田市荻町にある加工所では、高齢の女性が和気藹々と楽しく作業をしており大した重労働には見えませんが、瓶詰めしたものを高温消毒する際に、水槽に瓶一式を入れたり出したりする(画像参照)のが大変な重労働なので、体験加工参加者にこのような重労働をお願いすることで、高齢女性(従業員)の負担が減るだけではなく参加者の参加意識も高まり、体験作業への価値をより感じてくれるのではないかと思います。個人的な感想ですが、トマトの収穫作業、加工作業、ランチ、お土産のトマトジュース3本付で一人あたり3,000〜5,000円ほど課金できるのではないかと思います。

みなみん里 ピーマン栽培ハウス

次に向かったのが、ピーマンの栽培ハウスです。しかしながら、収穫時期も終盤のため寂しい風景でした。初めて聞いた話ですが、寒暖の差が激しい方が、ピーマンの色づきはよいとのことでした。ピーマンの旬は、7 月〜9 月で生育には30 度くらいが適温とのこと。この頃値段は一番安いですが、量が一番出るため金額に結びつきやすいとのことです。逆に言うと、冬の時期でも出回っているピーマンには、大量の燃料コストが掛かっているか、国産でなければ大量の輸送費用が掛かっていると言うことになります(海外物のピーマンはあまり見掛けたことはないですが)。トマトの栽培ハウスもそうですが、原油高騰で野菜の価格が上がってしまうと言う理屈が、現実となって目の前で見えた瞬間でした。実際に自 分で栽培してみないと分からないことに気が付きました。

みなみん里 ピーマン栽培ハウス

これは、子供の食育に繋げることで食べ物を粗末にしない、野菜を好き嫌い無く食べるということに繋げられるのではないかと思います。

ピーマンの定植は3月で、通常1反あたり6トンから6トン半収穫できるとのこと。1本の木からは800〜900個(9〜10キログラム)収穫できると言うことです。ピーマン栽培に費やされる労働力の殆どが収穫とのことで、低いところになるピーマンの収穫は、腰をかがめなければならず、腰への大きな負担になっているとのことです。

また、旬の収穫作業は朝5時から夜11時まで行いますが、日中は熱さのため昼休みを取るそうです。朝早く昼寝を取ることから、現地では年寄り向きの仕事と説明を受けました。現時点では思いつきませんが、この特性を逆に活かして生産効率を上げることが、農業生産法人としては利益追求のポイントになるのかと思いました。

今回はハウス栽培と露地栽培の両方を拝見しましたが、露地物の方は生育が遅く、節と節の間が短く木の形も異なるようです。両方行っているのは、トマトの吊り下げ対ななめ誘引の比較を行っているのと同じように、生産効率の比較のためでしょうか。

みなみん里 甘藷畑

みなみん里 甘藷畑

みなみん里 甘藷畑

続いて、甘藷(サツマイモ)も栽培畑を訪問しました。あいにくの雨の後の作業とのことで、普通の靴で畑に入るとすぐに靴底が3 センチほど厚くなるような状態。トラクターもキャタピラなので何とか作業 が進んでいるといった様子でした。

収穫行程は、トラクターによる収穫、そして一定量が穫れたところで手作業によるツルの処理と選別を行います。

いずれも高齢者による作業ですが、黙々と行っていました。ぱっと見たところ、変哲もない作業ですが、芋から出る白い灰汁を処理しないと衣服に付着すると落ちないようで、このあたりは丁寧さが要求される地道な作業です。

作業量は1日あたり3反半が限界で、収穫された芋はすぐに出荷されるわけではなく、糖度を増すためにしばらく寝かされるようです。

みなみん里 トマト栽培ハウス(ななめ誘引方式)

吊り下げ方式と同じ品種のトマトですが、こちらはななめ誘引方式という栽培法です。同じ品種でどれだけ生産効率と収穫量や糖度に変化が付くかどうか比較するために、この方法でも栽培しています。ちなみに、臼杵市の冬春トマトは、このななめ誘引方式が標準とのこと。

8月の盆明けあたりの定植から約10ヶ月間栽培しますが、20段くらい収穫するとのことです。糖度5.5〜6.0位を狙って栽培すると12〜13トンほどの収穫量になります。20トンほど生産量を確保すると糖度は5ほどもあれば御の字とのことでした。

吊り下げ式に比較すると全ての玉に日光を当てやすいため発色はし易そうです。吊り下げ式で出来たトマトは1つ1つが箱入り娘、ななめ誘引方式は優等生だけど金太郎飴で個性が少ないような個人的な印象を受けました。実際にどっちがどのような味かは食べ比べる機会がなかったのが残念ですが、同じ糖度でも何かしら味に違いが出るとしたらそれをセールスポイントにしても面白いと思いました。

【最後に】農業生産法人訪問を振り返って

毎日の収穫作業で畑やハウスに出掛けていると、どのようなことが起きてどのような対応をしたのかという作業記録を付けるのが現実的に難しくなると思いました。例えば、作業中に手帳を持ち歩いたり、メモ的に録音したりすると言うことはとても困難だと思います。しかし、農作業の記録と収穫という結果を照らし合わせた際に、どのような因果関係があったのか、改善するためにはどの作業をどのように改善していくべきなのかを考える際には、現場の記録が属人的ではなく誰もが使えるデータでなければ難しいと思いました。

例えばトマトの脇芽摘み作業も、1反あたりどれくらいあるからどれほどの作業量になるのか、その作業量を外部から来た観光客やヘルスケア目的での受け入れの人にやらせる場合、どの程度の時間が掛かるのか、または時間稼ぎになるのかという指標がたてられます。それ以外にも、堆肥や水分の調整量と糖度の因果関係も定量的に見直すことで、効率的且つ競争力のある商品を生み出すことに繋がると思います。

一般的な畑を見てみますと、ここに述べたことは全て農家が長年掛けて蓄積したノウハウです。このノウハウを、農業生産法人全体で共有することによりコスト競争力でも製品の差別化でも勝てる源泉に出来ると思います。

個人の農家では高齢化、農家の減少という社会現象が続いていますが、農業生産法人が同じ道を辿らず、より若手が誇りを持って働ける産業として確立するためにも現場情報の収集、分析のための仕組みの導入が必須ではないかと感じました。

また、一個人としてはこの分野での成長性を鑑みて、必要なツールの商品化をすることで生業を興すのも1つの手ではないかと思いました。まだ思いつき段階ですが、もう少しに詰めて改めてお話しさせて頂ければと思います。

今回は、お忙しい中このような貴重な機会を頂けましたことを深く感謝し、日本アグリマネジメントの今後の大いなる発展と日本の食産業に貢献して頂くことを祈念して、レポートの括りとさせて頂きます。

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